ファッション・マーケティング論ワークショップ研究会消費者行動研究グループ | 発 表 者 | 橘 喬子(夙川学院短期大学) | 増田大三(近畿大学) | 共同研究者 | 川中美津子(相愛女子短期大学) | 隈元美貴子(山陽学園短期大学) | 弘津真澄(福岡大学) | 松木敬子(山陽学園短期大学) | 早川雅明(成安造形短期大学) | 林 仁美(成安造形短期大学) | 針木 文(宝塚造形芸術大学・大学院) | |
- 研究の目的
現在は、価格破壊、価格革命、それらを実現した新業態の誕生、規制緩和の進展、それに伴う外資流通企業の進出による大競争時代の到来などの現象に代表される「第二次流通革命」の真っ最中にあり、わが国の流通システムは大変革期をむかえています。この変革は、ファッション業界においても起こっており、新業態のSPAの成長やSCMを中心とする製版同盟の形成など、ファッション産業構造の変革を追っている。
このような産業構造の変革の原因は、産業内の競争環境の変化に起因する部分もあるが、購買者である消費者の価値観・意識・行動の変化による部分が大きなウエイトを占めていると考えられる。90年代のバブル崩壊後の低迷する経済環境の中で、消費者はその生活文化度を安定型生活文化度からエンジョイ型生活文化度へとシフトし、単なる商品の購買者から生活者へとその立場を転換し、生活空間を重視した意識・行動を取るようになっていと考えられる。
そこで、ファッション・マーケティング論ワークショップの消費者行動研究グループでは、生活者の生活実態や意識・行動を調査分析することによって、生活者の生活文化度を検証することを目的にして、前回は女子学生の意識・行動に関する調査・分析を行い、彼女たちの生活文化度がエンジョイ型へと変容しつつあることを示した。生活文化度は、それぞれの世代が過ごしてきた時代背景、その時々の経験、現在の経済環境や生活状況などによって異なると考えられる。そこで、今回は、20歳以上の社会人の女性を対象として、生活実態、生活意識と関心、交流と余暇、ファッション意識、店舗選択などについて調査・分析を行い、世代ごとのそれらの特徴を明らかにすることを目的にした。
- 所究方法
2-1. 講査方法
調査の対象は中部、近畿、中国、九州を中心とした地域の、短期大学生、四年生大学生の母親や姉妹及ぴ一般社会人である。調査サンプル数は855である。調査方法は質問紙調査法で行った。基本的には回答者に質間用紙を配布し、郵送によって回収する方法により1998年10月~11月に実施した。
2-2. 分析方法
5歳ごとの区分で世代を見た場合、世代間におけるファッション意識・行動の違いが曖昧であったので、一般的に○○世代と名付けられて顕著な特徴がある世代として、「団塊ジュニア(25・29歳)」、「新人類(35・39歳)」、「団塊(50・54歳)j、「戦前(60歳以上)」の4つの世代を抽出した。
そして、各質問項目の単純集計とクロス集計、質間項目間の相関分析、世代間の質問項目の相関分析おこなった。世代間の相関がある場合は世代間で類似の意識・行動が見られるという意味で現在の時代効果、相関がない場合は世代効果として、それぞれの世代の特徴と見ることができると考え、検討を加えた。
図表1 世代別の人日統計学的特徴(%)
|
|
ジュニア |
新人類 |
団塊 |
戦前 |
結 婚 |
未婚 |
86.5 |
27.6 |
7.0 |
7.9 |
既婚 |
13.6 |
72.4 |
93.0 |
92.1 |
子 供 |
いる |
5.8 |
61.8 |
90.0 |
90.3 |
いない |
94.2 |
38.2 |
10.0 |
9.7 |
家族数 |
1人暮らし |
13.5 |
4.O |
5.0 |
14.0 |
夫婦 |
8.7 |
11.8 |
15.0 |
38.6 |
2世代 |
58.6 |
65.8 |
56.0 |
21.9 |
3世代 |
17.3 |
15.8 |
23.0 |
19.3 |
兄弟姉妹 |
1.9 |
0.0 |
0.0 |
0.0 |
その他 |
0.0 |
2.6 |
1.0 |
5.3 |
住 居 |
持ち家 |
68.3 |
76.3 |
89.0 |
91.2 |
賃貸 |
29.8 |
19.7 |
8.0 |
7.9 |
社宅・寮 |
1.0 |
4.9 |
2.0 |
0.9 |
その他 |
1.0 |
0.0 |
0.0 |
0.0 |
職 業 |
定職 |
58.7 |
36.8 |
25.0 |
6.1 |
自営 |
1.9 |
7.9 |
11.0 |
21.1 |
不定職 |
21.1 |
28.9 |
25.0 |
7.0 |
無職 |
18.2 |
26.3 |
39.0 |
65.8 |
- 分析特果
3-1. 質間項目聞の相関について
最初に、質間項目間の相関分析を行なうことによって、アンケート全体の大まかな鳥瞰図を作成した。ここでは相関分析になじまない項目を除き、その他の質間項目をすべて対象として相関行列を作成した。その中から相関関係が0.30以上でP値が0.01以下で有意なもののみを抽出し、それを図にした。その結果が図表2、図表3である。
まず、図表2の中央よりやや有寄りにある「年齢」・「結婚」・「子供の有無」という項目に注目してもらいたい。これらの3項目間の相関係数は0.5以上であり、これらの項目が示しているのはライフステージである。ある意味で、世代間分析においては、ライフステージが中心になるといえる。この3項目を中心に、図表2は大きく左右に分れている。左側がファッション意識と行動に関する部分であり、右側が生活の革新と社会との交流である。この図からわかるように、多くの質間項目があったが、相関係数が0.3以上となるのは意外と少ないことがわかった。また、ファッションに関してライフステージに関する質問項目が、間接的に影響を与えていることもわかった。
それでは、図表2のライフステージに関する3項日から読み取っていくことにしよう。「携帯電話の所有」・「パソコンの使用」・「インターネットの使用」といった情報機器の使用による生活の革新性は、年齢との間(「携帯電話の所有」については「結婚」・「子供の有無」とも)に相関があり、当然考えられることであるが年齢が高くなるに従って革新性は低くなる傾向にある
「地域の人との会話」については「年齢」と「子供の有無」との間に相関があり、年齢が高くなるほど、また子供のある人ほど、地域の人との会話が多くなっている。また、「地域の人との会話」は「人との付き合い方」と相関があり、「地域の人との会話」が多いほど、「人との付き合い方」が広くて深く、少ないほど狭くて浅い交流をしているといえよう。
「新聞を読む時間」は「年齢」と相関があり、年齢が上がるほど、新聞を読む時間が長くなる候向にある。つぎに、ライフステージの左側の関係を読み取っていこう。この左側を拡大したものが図表3である。ライフステージにかかわる3項日は、直接にファッション意識や行動に関する項日に関連するのではなく、2つの項目を媒介として、ファッションに関わっていることがわかった。lつは、経済力を示す「自由裁量金額」と「ファッションへの支出金額」であり、もう1つが、情報を示す「ファッション雑誌を読む」である。
「自由裁量全額」は「結婚」と「子供の有無」とに相関があった。未婚であるほうが、結婚していても子供がないほうが自由裁量金額は高いというものである。また、当然のことであるが、「自由裁量金額」と「ファッションヘの支出金額」には強い相関がみられた。「ファッション雑誌を読む」はライフステージを構成する3項目と相関があった。ライフステージが高くなるほどファッション雑誌は読まないという傾向を示している。
また、「ファッション雑誌を読む」は「気に入ったブランドの有無」・「流行のファッションの採用」・「他人のファッションへの関心」・「セレクトショップでの購買」と相関があった。フアッション雑誌を読む人ほど、気に入ったブランドがあり、流行のファッションの採用が早く、他人のファッションが気になり、セレクトショップで購買する傾向が強いといえる。「ファッションへの支出金額」は「ファッション購入店のタイプ」と相関があり、ファッション支出金額が多いほど、単独ブランドを扱う店舗での購入が多い傾向を示している。「ファッションへの支出金額」と「ファッション雑誌を読む」の双方と「ブランドへのこだわり」は相関があった。
ファッションへの支出金額が多いほど、ファッション雑誌を読むほど、ブランドへのこだわりが大きいという傾向を示している。以上のことから、ファッション意識や行動はライフステージ(世代)に影響されるものの、直接的ではなく、経済的要因と情報的要因の2つを経由して、ファッション意識と行動に影響しているといえよう。以下では、項目ごとに詳細に検討を加え、各世代において上述の関係がどのようになっているのかを特徴のある部分を取り上げて報告する。
3-2. 生活実態
3-2-1 自由裁量金額と使途先
3-2-2 革新性
3.3 生活意識と関心
3.4 交流
3.5 情報収集行動
3.6 ファッション意識
3.7 ファッション店舗の選択
3.8 今回の発表のまとめ
今までの質問項目ごとの世代別の特徴をもとにして、最初に示した質問項目間の関係を各世代間にあてはめ、非常に簡素化して図表化すると、以下の図表に示したようになる。
|